2007年06月24日

空に浮かぶ子供 (A child across the sky)

 フィリップ・ストレイホーンは、ホラー映画『深夜』シリーズを大ヒットさせた映画監督。ところがシリーズ新作の完成直前、彼は突然ライフル自殺をしてしまう。親友のウェーバー・グレグストンは、彼が自分に遺したヴィデオテープのなかに、自分への遺言らしきものと共に、この世に存在するはずのない映像を見い出す。残りの二本は空白。だが、ビデオの映像の中でフィルは言う。そこには、これから映像が映るのだ、と。

 『月の骨』の登場人物ウェーバー・グレグストンを主役に据えた、シリーズ第三作(もっともこれはシリーズ化が意図された時から数えての話。処女作『死者の書』や邦訳では次になる第二作『我らが影の声』も、のちにシリーズの中に組み込まれていく)。やっぱり『炎の眠り』では活躍させたりなかったのではなかろうか。

 さて、この度のテーマ、それは恐怖(=悪=死=天使)。括弧内については、ちょっと大雑把なくくりではあるんだけど、作品を読めば意図するところが分かってもらえると思う。この、死と天使を直結させたという点で、この作品もまた、キャロルの作品世界において重要な意味を担っている。「死」はこれまでの作品でも重要なサブテーマだったわけだが、ここではそれをメインテーマとして打ち出し、さらにこれまでは伏流だった「映画」をそこに噛み合わせることで、これまでにない雰囲気をつくり出している。二つはお互いに影響しあい、終盤で一種の芸術論にまで高まっていくことになる。

 と、いっても別にこむずかしい話ではないので御安心を。ヴェナスクはまたでてくるし、カレンは旦那と仲良くやっているし、その他これからお馴染みになるキャラクターたちが続々登場して、楽しませてくれること請け合い。もちろんこれがキャロル初体験という読者にとっても、キャラクターや軽妙な語り口調、その軽さに似合わぬ深い、あるいは怖い言葉の数々は、きっと忘れられないものになるはず。

 今まで必ずなんらかの形で語られてきたロマンスめいた部分がほとんどないのも子の作品の特徴。前作がそういう点で濃かったのと関係あるかも。


posted by けいりん at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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