2007年06月24日

天使の牙から (From the teeth of Angel)

文庫版

単行本


 ワイアット・レナード。テレビ番組での役名「フィンキー・リンキー」として知られている彼は、癌にかかり、今や余命いくばくもない。彼の前にあらわれた「死」。ワイアットは彼に質問をし、その答えを正しく理解することで、不思議な力を身につけはじめる。
 一方、もと大女優のアーレン・フォードは、リーランド・ジーヴィッチというカメラマンと知り合い、恋に落ちる。二人の中は少しづつ深まっていき……。

 フィンキー・リンキーというのは、キャロルファンにとっては、単におなじみというだけではない、何かわくわくさせるところがある名前なんだけど、これは(『死者の書』のフランス作品がそうであるように)、作中で割り当てられた役割に、読者も知らず知らずのうちになじんでしまっているからなんだと思う。

 さすがに、他も重要人物のオンパレードで、ウェーバー・グレグストン(『空に浮かぶ子供』の主役)はもとより、イースタリング夫妻(『炎の眠り』)、その息子ニコラス、フィリップ・ストレイホーン(『空に浮かぶ子供』)など、これまでの作品に目を通してきた方なら懐かしさと愛情に目を細めてしまうようなキャラクターが並ぶ。とくにイースタリング夫妻に関しては、今回、懐かしのあの場所も出てきたりするんで、ファンなら思わずにやりとしてしまうはず。

 かといって、初めての読者には十分楽しめないかというと、そんなことはない。ひねた読者にはラスト近くの「衝撃の事実」が読めてしまうかも知れないけど、この本の読み所はそこではなく、そのあとに控えた感動の結末のほう。いつもながらに死と悪意を綿密に書き込むキャロルだけど、ここに用意された結末は『犬博物館の外』の結末と並んで、強い意思と、そして愛に溢れたものだ。

 「ワイアット」のパートと「アーレン」のパートが交互に語られ、最後で一つになるという構成も楽しい。「一つになる」ところにそれほど特別な仕掛けがあるわけでないのはちょっと物足りないところだけど、どこかホラーめいた前者とラブラブ展開の後者がどうやって「一つになる」のか、あれこれ考えつつページをめくるのも読書の楽しみってもんだろう。


posted by けいりん at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。